始まり

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 二ノ杉(にのすぎ)中学に、八重野(やえの)キリカという末期的電波美少女の名を知らないものはいない。  八重野キリカ。通称、魔王。職業、魔王。特技、召喚術と暴力全般。趣味、世界征服。  俺の家の右隣りに立っている一軒家、八重野家の一人娘で、贔屓目なしに美人。  キューティクルが溢れていそうなつやつやの黒いロングヘアから覗く、切れ長の凛とした瞳に、モデルを彷彿とさせるすらっとした白い肢体、加えて年齢と不相応の大人びた顔立ちが人形のように精巧に整っているものだから、幾人もの男子生徒を(最初の内だけ)虜にしたとかいう学園のマドンナ的ルックスの持ち主。  ただし、中身が狂っている。  この科学が発展した現代に、自分は本気で魔王だと確信までしている魔性の電波。  この断トツトップのマイストレッサーでもある類稀なる変人は、一緒に幼稚園へ通っていた頃からずっと、俺を暗くてじめじめとした己の魔王道へと導き続けてきた。
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