始まり

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「…………」  本当に、トラブルメイカーの素質だけは認めてやってもいい。   俺は写真立てをパタンと伏せ、物憂げにため息なんてものを吐いてみた。  写真には俺とキリカ、そして他の魔王部員二人を含めて四人が仲良く並んで写っている。  写真でキリカは堂々と腰に両手を当てながら、弾けるような笑顔を見せていた。  もう二度と見ることの出来ない笑顔を、静止画の向こうで輝かせていた。  あの末期的電波美少女が失踪してから、もう半年。  散々俺達を振り回しておいてから、アイツはあっさりと俺達の前から姿を消した。 『私は帰る。在るべき場所に帰るのだ。私は、私の不在する物語を完結させに行く』  ここは、私の登場しない物語だから。  最期までキリカらしい、そんな電波で意味不明な言葉だけを遺して。
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