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全く同じ容姿と服装の青年が
そこで向かい合いました
片方は悪戯を思いついた子供の様な表情を
片方は弱々しい表情を浮かべております
お分かりかもしれませんが
その二人は魔王様と私めでございます
「……ふむ。外見はそれらしいな。相変わらず見事だ」
「はあ、ありがとうございます」
私めは魔王様の姿に変身いたしました
着ている服は本物ではなく
表面を変質させて作ったものでございます
表情をのぞけば、姿だけは完璧に魔王様のものとなっているはずです
「問題は声か……」
魔王様のおっしゃる様に、私めと魔王様の声は大分違っております
私めの声は
声変わり前の幼い子供の様な声
魔王様の声は
何人もの女性を陥落させた低音の美声でございます
かなり違う声です
しかし、私めにはその様な事は気にするほどの事ではありませんでした
「……魔王様、これではいかがでしょうか?」
私は声帯を変化させました
これで魔王様の声になったと思うのですが……
自分の声となると聞こえ方が違うため、細部もできているか不安です
「おぉ! バッチリだ!」
魔王様から合格点をいただきほっとしました
……今気づいたのですが、このまま声を変えずにいれば魔王様も諦めたのではないでしょうか?
そう考えたものの、すぐに思い直しました
魔王様のことですから
声が似るまで血へどを吐いても練習させられた事でしょう
私めの判断は間違っていなかったようです
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