プロローグ

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 春の穏やかな日。  空は清みきり、暖かな風が桜の花びらを(ちゅう)へと運び舞い散らせる。追いかけるかの様に花にとまっていた蝶もまた、宙へと舞った。  風情豊かな庭を穏やかな笑みをこぼし眺める青年が一人、春の陽気に誘われたのか寝間着のまま縁側で春の庭を一望(いちぼう)していた。  どこかで鳴いている、鳥たちが(かな)でる歌。  目を静かに閉じる。  鳥たちの歌声は、青年の耳に心地よく響き渡らせた。春の暖かい陽気と鳥たちの歌声はいまや子守唄となり、眠りに誘われる。青年がうとうとし始めた頃、一瞬にして眠気も吹き飛す声が少し離れた所からかけられた。 「そんな所で寝てると風邪をひくぞ、総司」
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