120人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてヌシよ」
セシルにポンと肩を叩かれる。
「二発で満足したか?」
満足したか、だって?
右で作った拳を左の掌にぶつける。
「冗談。あと百発ぐらい殴らなきゃ気が済まねえ」
「ならワシの千発と合わせて千百発だな」
希望は見えた。
以前出会った時の印象が鮮烈で手も足も出ないのではと思ったが、いける。
「……そ…………そ………………そ」
もぞもぞもぞもぞもぞもぞと、身を捩って立ち上がるソレル。
血走った眼がギョロリと俺達を見る。
「クソッタレがぁアアアアアアッ!
ころ、殺ころコロ殺してやるぞ!!」
うわごとのようだったのが、突如気でも触れたかのように喚き出す。
右足を引き上げ、床を踏む。
するとソレルを中心に外に向かって立っていられない程の烈風が叩きつけられる。
天地逆さまの体勢で壁に激突する俺。
「神様がなんて言葉遣いだよ」
余程のショックだったのか、子供のように『死ね』だのといった言葉を無意味に繰り返すソレルの姿はなんというか、
「哀れだな」
そう、その通りだった。
先程の烈風を華麗に避けていたらしいセシルが、傍らにそっと着地する。
「あの偉そうな態度も、自分が神って余裕があったからか。
精神年齢調べたら案外子供と同じなんじゃねえの?」
言ってみれば、今まで一度も叱られた事もなく育ってしまった子供同然だ。
「来るぞ」
ソレルの右手にいつの間にか握られている紺碧の槍。
この国を守護する神『セイレーン』の矛。
「死ねええええッッ!!」
頭を使って跳ね起き、横へ跳ぶ。
セシルと俺を分かつように槍から伸びた閃光が爆(は)ぜる。
回避のままに、左からソレルに飛びかかる。
反対側からはセシルが。
槍の威力は確かに脅威。
「だけどやっぱ中身が伴わなくちゃな!」
完璧なタイミング。
「舐めるなァ!!」
ゴアッ! と衝撃波。
まるで走鉄車に跳ねられたような衝撃にたまらず吹き飛ぶ。
壁に激突、しても止まらず突き破る。
最初のコメントを投稿しよう!