120人が本棚に入れています
本棚に追加
「――――そう、こういうふうに」
「!」
天使の体がぐらりと前に傾く。
背から翼をかたどるように噴出するのは夥しい血。
しかし天使はそれに至っても、表情を一切歪ませず、まるで電池でも切れたかのように力無く倒れた。
俺ではない。セシルでもない。
考える必要などなかった。
天使を背後から斬った剣を片手で弄ぶその人物は、まるで邪気もなく微笑んでいる。
「……ソレルッ!」
満足そうに笑みを浮かべ、ソレルが手にしていた剣を放る。
するといつぞやと同じく、それは石ころとなって転がった。
「まさか本当にやってくるとは……。
驚きを通り越して笑えてきますね。
――――ん?」
ソレルは足元に転がった、つい先程自身が斬り捨てた天使がまだ動いている事に気付く。
「まだ壊れてなかったのか。
意外と頑丈だったんですねぇ」
まるで他人事のように。
「……ッテメエ、何してやがんだ!?」
「何故あなたが怒っているんですか?」
そうソレルに問われて自分でも分からなかった。
しかし怒っている事は、俺自身自覚出来ている。
「使えない道具を処分しただけですよ。
死に損ないと、蛇一匹始末出来ないとは…………」
ガッ、とソレルは天使に蹴りをいれた。
「どうやら取り柄は頑丈さだけだったようです」
ニッコリと、相変わらず無邪気でいてすごく胸糞悪い。
原理は不明だが、ソレルが一睨みすると、天使が見えない力に弾かれるようにして壁に激突した。
「後でしっかり処分してやる」
無表情でそう言ったかと思うと、こちらを向く時は再び笑顔。
コロコロと目まぐるしく変わるこいつの表情にある共通点は、他人をゴミ以下にしか見ていない眼だけだ。
最初のコメントを投稿しよう!