3章 ―参話―

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ゴキン! という嫌の音をさせて、俺は一人悶絶していた。 というのも折れた首の骨を無理矢理はめ直したのだ。 勿論、それは言葉に出来ない激痛を伴う為、みっともなく涙はハラハラ流れている。 けれどこんな馬鹿げた体を今日ほど有り難く思った事はない。 「なんせ、神様を敵にするには命がいくつあっても足りないからな」 首に手をあてて調子を確かめる。 その様子を、ソレルは苛立たしげに見ている。 「化け物め」 「傷つくな。俺は人間だ」 「は。あなたの一体どこが人間なんですか? 化け物」 すっと差し出した左手に炎が灯る。 「でも化け物といえど、体を灰にでもしてしまえばもう復活は出来ないのでしょう?」 図星だった。 俺の体は不死身であって無敵ではない。 ある程度の原型を残したうえで、セシルに蘇生させてもらう事が条件。 先程のような骨をはめる荒業でもない限り、俺はすり傷一つ自分で治せない。 炎をちらつかせてプレッシャーをかけてくるソレルに、思わず後退る。 この場にはもう一人。 「それをワシがさせると思うか?」 セシルはソレルの背後に現れると、下手なナイフより鋭い五爪で喉を抉りにいく。 しかし読んでいたのか、瞬時に反応したソレルの槍が五爪を受ける。 「薄汚い蛇め……。 これ以上僕の世界で這いずるな。 目障りなんだよ!」 薙払うソレルの力に逆らわず、セシルは間合いをとる。 神と、悪魔の王の対峙。 「自分の世界、か。 ヌシは大婆様の話し通り、傲慢な男だ」 「傲慢? それは違います。 僕は神です。傲慢ではなくこれは統治。 無知な存在を導くのは神たる僕の役割だ」 「ふざけんな」 俺は逆手にナイフを構える。 「そんなの結局テメエの支配じゃねえか」 「せめて管理と言ってもらいたいですね」 「どっちでも同じだ。 俺達はあんたに縛られる筋合いなんてない!」 「筋合い?」 ソレルはくるりと体を回し俺に正面を向く。 「何を的外れな。 それを選べる自由を君達が持っているつもりですか? 自由は与えられるもの……、そして僕は君達にそれを与えたつもりはない。 勿論、これからも与えるつもりはないですけど」 与えるのはいつも恐怖だけ。 ソレルが満たしたいのは己の支配欲なのだから。 「そう、自由など与えていない。 君達にも――“外の連中にも”」 「!?」 「聖撃」 笑みと共に、ソレルは指をはじく。
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