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次の日の放課後。
「紗胡ちゃん?」
飛永くんに声をかけられた。
「これ…。良かったら読んでみて。」
格闘技の雑誌だった。
断る間もなく、手渡され、彼は去って行った。
それから、私は、時々、飛永くんに誘われ、放課後一緒に帰ったりするようになっていた。
私は、英語部で学園祭が近いため、舞台の稽古で帰りが遅くなることが多くなり、荷物を取りに教室に戻ると、飛永くんと顔を合わせることも度々あって。
その日の放課後も一緒になった。
「最近、毎日遅くまで残ってるんじゃない?」
と、飛永くん。
「うん。学祭近いから。出番は少ないんだけどね。セットとかも作ったりしなきゃないから。」
私は答え、歩き出そうとしたところで、突然、よろめいた。
「紗胡ちゃん?大丈夫?少し休んだ方が良いんじゃない?」
と、飛永くんは、私の額に手を当てた。
「熱あるじゃん。」
「ううん。大丈夫。もう、下校時刻も過ぎてるし。」
「そっかぁ、そうだよなぁ…。じゃ、家まで送るから。おぶるから、このジャージ履いて。」
そう言って、飛永くんは、自分のジャージのズボンを私に渡した。歩けると言ったが、強引に促され、飛永くんの背中におぶさった。
飛永くんの背中は、あったかくて、なんだか大きく感じた。私は、具合が悪いながらも、自分の胸の高鳴りを感じていた。
家に着いたが、電気は消えており、誰もいないのに気付くと飛永くんは、ほっとけないと、家の中まで着いて来て、看病してくれた。お粥も作ってくれ、私をベッドに寝せ、頭にタオルを載せ、そのタオルを何度も替えてくれた。いつの間にか、私は寝てしまったようで、気付くと夜中の2時を回っていた。私の熱はすっかり下がっていた。飛永くんは、私のベッドに寄りかかり気持ち良さそうに眠っていた。
起こすのもと思い、一応、床に布団は敷き、飛永くんの身体に、掛け物をかけ、私は、また寝た。
翌朝、目を覚ますと、飛永くんの姿はなく、
「熱下がったみたいだから、帰るね。じゃ、月曜日、学校で!お大事に。今日明日ゆっくり休んで、また来週頑張ろう!」
と、メモだけが残されていた。
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