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そんな飛永くんの優しさに、私は、惹かれずにはいられなかった。
翌月曜日に、これまでにないくらい、飛永くんには、お礼を言った。
学祭も終わり、数日経ったある日、以前借りた、格闘技の雑誌を返そうと、放課後、教室で飛永くんを待っていた。外が夕焼けで赤くなって来た頃、部活から飛永くんが教室に戻って来た。私は、飛永くんに駆けよった。丁度、黒板の前に来た所で、普段から、ちょっとツッパった感じの男子2人が教室に入って来た。飛永くんは苦手な人たちだったらしく、私は咄嗟に飛永くんに引っぱられ、飛永くんと教卓の下に、隠れる感じになっていた。飛永くんの顔が近い…。飛永くんの吐息が私にかかる…。ドキドキと鼓動がだんだん強くなっていく。私は、ドキドキを隠そうと、口を開いた。
「飛永くん…。これ…。」
と、私は雑誌を差し出し、彼を見た。
彼は、雑誌を受け取ると、私を見た。
目が合う・・。
私は、咄嗟に目を伏せた…。沈黙が続く…。飛永くんの顔が近い…。飛永くんの吐息が私にかかる…。さらに、鼓動が強まっていた。床の上に置いていた私の左手の上に、彼の右手が触れた。私は彼を見た。彼と目が合う。私は、彼から目が離せなくなっていた。次の瞬間――。
彼の唇が私の唇に触れた。
私は胸が張り裂けそうなくらいドキドキしていた。
先ほど、教室に入って来た2人の音は消えていた。出て行ったんだろう。
突然、彼は、私から離れ…、
「ご…ごめん…。俺…。」
と、彼は、逃げるように教室から出て行った…。
私は、自分の唇に指を触れ、しばらくの間、動けないでいた。
辺りはすっかり暗くなり、下校のチャイムが鳴り始め、私もやっと我に帰り、私も家に帰ることにした。
私は、何となく、家に帰りづらく、帰り道にあるコンビニに立ち寄った。
雑誌のコーナーで、格闘技の雑誌が目に止まり、私は、指を触れ、しばらく見つめていた。
「紗胡ちゃん?」
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