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まだ剣も魔法もあった頃。
街の外には蔓延る魔物。
街の教会では祈りが聞こえる。
そしてそんな街の地下の地下。
剣と剣がぶつかる音、魔法がぶつかる音。
人々の騒ぎ声、そして鳴り渡る足音。
ここは闘技場。
そこにふらり、と現れたのは、顔に血の気のない細身の少年。
身体よりもやや大きいローブを羽織り、フードを被った辺りを見ると、魔道士のようだ。
深く被ったフードから覗くのは、赤い瞳と銀の髪。
そして酒場の、お調子者と名高いマスターに、ぼそりと呟いた。
「出場希望なんだ」
マスターは一瞬、紫の目を見開いたが、すぐに面白そうに笑うと、
「まだ坊やには無理さ、怪我しない内に帰んな」
と、少年に告げた。
その時だ。
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