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「ちちうえー、ははうえー!」
まだあれは俺の右目が失われる前…そう、独眼竜と呼ばれる前だった。
まだまだ遊びたい盛りで、ただただ笑顔で走り回ってりゃそれで良かった。
そんな風に俺は幸せに生きていた。
父上が居て、母上が居て、小次郎が居て。
それが当たり前だった。
「………!」
「梵天丸!」
あの、急な熱が出て倒れるまでは。
声も出ずに崩れる様に倒れ込んだ俺が最後に見たのは母上で。
俺の意識は、深い闇にと落ちていった。
いたい、いたい、くるしい、たすけて。
くらいよ、こわいよ、ははうえ。ちちうえ、どこにいるの?こじろ、たすけて。
ぼくはこわかった。
あつい、あつい、めがいたい。やけてる、ぼくは、どうなるの?
そこで、ふっとあかりがみえた。
そこにひきよせられるようにあかりはおおきくなって………
ぼくはおきあがった。
「おお、梵天丸様!」
ほっとしたようなこえにやけにせまいしかいでめをむければしろにつかえているいしゃがぼくのひたいにふれる。
「これで一安心ですじゃ。まだ右目に巻いてある包帯はとってはなりませぬぞ」
そういしゃはつげてへやのそとにたいきしていたじょちゅうにぼくのめがさめたことをつたえた。
「梵!」
しばらくして、そういってとびこんできたのはちちうえだった。
「心配したんだぞ、生死の境をずっとさ迷ってたんだ。生きててくれて、良かった…」
わらってあたまをなでてくれた。
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