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日向くんは緑のエプロンをつけて品出しを始める。
手際の良さについみとれていると、外がなんだか騒がしくなった。
自動ドアが開いて子供の群れが入ってくる。
なぜか大和は気付かれないようにバックルームにひっこもうとしている。
「何してるの?」
「わっバカ黙ってろ!」
バカって言われた…
でもこのやりとりに子供たちが気付いた。
「にーに見つけたー!」
「にーにー!!」
大和は頭を抱えている。
にーにということは、大和の兄弟?
見る限りでは大和が1番上のお兄ちゃんみたいで、私は意外だなと思った。
大和には一人っ子ってイメージがあったからだ。
「なんで来たんだよ」
大和はそっけない態度。
弟妹合わせて三人の兄弟たちは口々に『にーにのお仕事見にきたー』とわちゃわちゃしゃべっている。
「大和の兄弟かわいいね」
「お前は関係ないだろ」
冷たッ!!
極寒の対応に子供たちからフォローが出る。
「にーにお家ではすっごい優しいよ」
「照れ屋さんなの~」
大和は怒って子供たちを外に追い出した。
けど、自動ドアの向こうで弟たちの頭を撫でているのが見えた。
やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだな。
中に入ってきた大和はまたつんとした表情に戻っていたけど、私はそれほど苦手に思わなくなった。
「何ニヤニヤしてんだよ」
嫌そうな目で見てくる大和。
すいませんにやけました。
温度差が激しい二人の間に、帰ってきた店長が声をかける。
「ただいまぁ♪
いい子にしてたかい?」
手には紙袋を抱えている。
それに大和は冷たい視線を投げた。
「仕事中に予約の受け取り行ってんじゃねーよ」
ギクッ!と音がしそうなくらい店長は硬直した。
紙袋から見えたのは、『どっきどき☆恋愛学園』という題名のゲーム(初回特典付き)だった。
私はじっと店長を見つめる。
「やめてー!軽蔑しないでー!!」
店長は泣きながらバックルームに飛び込んでいく。
…そっとしておいてあげよう。
温かい目で店長が消えた扉を見ている私に、大和が紙を渡してきた。
「これ貼ってこいよ」
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