バイト注意報。

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温かい笑みにいいもん見たと思いながら、私はレジに帰還する。 「…平気なのか?」 私の顔を見て大和が意外にも気遣ってくれる。 みんな優しいな… 感動した私は自然と笑顔になる。 「日向くんが受け止めてくれたし大丈夫。 心配してくれてありがとう!」 私の言葉に、大和はあっそ、とそっぽを向いた。 と思ったらバンドエイドを取り出してひじに貼ってくれる。 転びかけた時、どこかにぶつけたみたいで ひじはちょっぴり血がにじんでいた。 「大和…」 じーんと優しさに震えていると、大和が顔を赤くして怒った。 「い、家での癖なんだよッ」 きっと兄弟がケガするとすぐに消毒とかしてあげるんだろうなー。 第一印象と違って良いヤツなんだ。 私は勝手に妄想して、生暖かい目で大和を見つめる。 「なんだよ、調子狂うな…」 しかめっつらで大和がレジを出ていく。 今日はなんだかんだで二人の違った一面を見ることができた。 とは言っても、まだ一日二日しか経ってないんだけどね… 「お疲れ様でした!」 業務が終わり、私は二人に頭を下げる。 挨拶に始まり挨拶に終わる!というおじいちゃんの信条のもと育った私は、挨拶には自信がある。 店長はいつも通りにっこりスマイルで「また明日ね」と言った。 Gマートを出た私の視界のはじっこに誰かが映った気がしたけど、振り返っても誰もいなかった。 気のせいだよね? すっかり暗くなった家路を急ぐ。 「ば、バレたかと思った…」 電柱にぴったりと身を寄せていた人影がしゃべった。 俺、常陸である。 出雲のバイトが終わる頃を見計らって来たつもりだったが、少し早かったみたいだった。 こんなにビクビクするなんて情けない。 小学生の時はもっと仲が良くて、ちゃんと『出雲』って呼べてたのに… 今じゃ話すのも緊張するわ苗字でしか呼べないわで―― 「だー!!考えてもしゃーねぇ! さっさとバイト受かって元の親密さ取り戻してやるっ」
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