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[うなれ!爆音!!]
「さーて、今日もバイトがんばりますか!」
私はロッカーの前で大きく深呼吸した。
すると――
「その意気だよ」
聞かれてた!?
今まで後ろに相模さんが立っていることに全然気付かなかった。
恥ずかしさでどんどこ顔が熱くなっていく。
ロッカーに閉じこもりたい気持ちでいっぱい…
そんな様子を満足そうに眺めて、相模さんは微笑んだ。
「やっぱし出雲ちゃんはかわいーね。
他の男には見せたくないな」
さらりと言うもんだから、顔の温度は上昇するばかりだ。
「もう、からかわないで下さいよ」
私は逃げるようにバックルームを出た。
大人の余裕って苦手だな…
そんなことを考えていた私は知らない。
私がいなくなったあとで、何か企んだように相模さんが笑ったことに。
一方、だいぶレジにも慣れてきた私。
隣にはぬぼーっとした印象の日向くんがいる。
タバコの補充をしつつ、私はこの間(脚立落下事件)のお礼をするチャンスをうかがっていた。
――今だ!
「昨日は助けてくれてありがとうございました!!」
お客さんが店を出た直後、日向くんに昨日買ったお菓子の箱を差し出す。
彼は差し出された『キノコの山』を見つめたまま黙っている。
まさか、タケノコの里の方が好きだったとか?!
むしろお菓子がダメ?
チョコ嫌いっぽい顔してるし…ああよく考えればよかった!!
私は一瞬のうちに動悸息切れで救心が必要になるぐらい冷や汗を垂れ流した。
そこで日向くんは急に何かに気付いたみたいだった。
「…ああ…昨日か」
…もしかして、わかってなかったからしゃべらなかったの?
わかると納得できる。
彼は大きな手でキノコの山を受け取った。
「よかった…嫌いなのかと思っちゃいました」
受け取ったってことは、チョコ嫌いじゃないってことだよね。
するとなぜか日向くんは目をぱちぱちさせ、何かを考え始めた。
そして私をまっすぐに見て、
「……嫌いじゃない。安心していい」
と言った。
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