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相模さんは見た目と違ってペコペコと謝る高校生に悪気はないと判断したのか、一応診てもらうために救急車に乗せた。
「さあ、この地獄絵図をどーするかが問題だな」
腰に手を当てて、ガラスと雑誌が散らばる通路を見渡す。
これだけ荒れていると何かをしようという気が起きない。
相模さんは日向くんに意見を求める。
「日向はどうする?」
「…片付ける」
もっともな答えが返ってきて、私たちは駆け付けた警察と一緒に掃除を開始した。
外はいつのまにか見物客で賑わっている。
部外者って気楽…
お店の損傷は思ったより少なくて、ガラスと棚が粉々になったくらいだった。
それでも、バックルームでは氷を頭にのせた店長がうんうん唸っている。
うわごとで『ただでさえ赤字なのに…』と言う始末。
バイトを始めて三日、とんでもないハプニングの発生だった。
けど、警察の献身的なお手伝いのおかげで店内はすっかりキレイになった。
Gマートはちょっぴり風通しの良いコンビニに変わり、夕方まで野次馬のお客さんで繁盛した。
「今修理屋が来てくれるってよ」
「う~ん…」
相模さんが氷の入った袋をとりかえる。
店長はいまだに復活のめどが立たないようだ。
春風が吹き込んで店の中はフレッシュな空気に満ちている。
これはこれで新鮮かも。
なんて勝手にのんびりしているとバイクの爆音が聞こえてきた。
またかと思ったら、今度はきちんと駐車場に停止する。
学ランに真っ赤なインナーシャツを着込んだ男子生徒が自動ドアの向こうに立っていた。
きびきびとした足取りでレジに歩み寄る。
耳にはいくつかのピアス、髪は脱色したプラチナ色をしていて、夜出くわしたら迷わず逃げたい感じの人だった。
彼はよく通る声で、
「今日はオレの舎弟がご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
と深く腰を折った。
――ええと、どこからツッコむべきなんだろう…
カンペキ不良なのにすんごく礼儀正しいところ?
舎弟っていう存在について?
私はギャップが激しい目の前の人物に動揺をおさえきれなかった。
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