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店長は楽しそうに言う。
「貼り紙に『男性に限る』って書いてあったでしょ?」
え…
えええええ?!
そういえば下の方に何か書いてあったかも…
私は顔が爆発したんじゃないかってくらい真っ赤になった。
レジのお兄さんが笑ったのも納得がいく。
「はやとちりしちゃってごめんなさい」
全身の血が顔に集中してるのがわかる。
早くこの場から逃げ出したい…!
私は180度回転して、部屋を出ようとする。
「まあ待ちなよ」
店長がにこやかに声をかけた。
帰りかけた私を眺めると、微笑んだ。
「いいね。採用☆」
思考が停止してしまった私。
たっぷり五秒経ってから、
「さ、採用ですか?!」
と叫んだ。
「うん。キミかわいいし、男ばっかりじゃむさ苦しいと思ってたしさ」
さらりと褒めて店長は私の頭を撫でる。
男の人に撫でられるなんて初めてだから、体はこわばっている。
「うちは自営業だから契約とかないし、気楽に働けるよ」
店長はロッカーからエプロンを出してきて私につけてくれた。
薄ピンクの優しい色合いが素敵。
右下についたポケットに『G』のマークがプリントされている。
「じゃあ、キミの名前聞いてもいいかな?」
店長がマジックのキャップを抜いて言った。
あっ、まだ名前言ってなかったんだっけ…
「片桐出雲(カタギリ イズモ)です。お願いします!」
私がお辞儀すると、店長はうんうんと目を細めてネームプレートに『かたぎり』と書いた。
「ボクはご存知店長の坂本上総(サカモト カズサ)だよ☆これからよろしく」
にっこり笑いながら、ネームプレートを胸元にセッティングしてくれる。
するとお店側の扉が開いて、さっきのお兄さんが入って来た。
あー!!と大声で店長を指差す。
「遅いから心配になって来てみれば…やっぱりセクハラしてんじゃん!」
「違うよ!」
店長は慌てて否定して、その勢いで机にぶつかる。
置きっぱなしだったコントローラが音を立てて落ちた。
ついそっちに目をやると、パソコンの画面で二次元の女の子が微笑んでいた。
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