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「あっ、これは誤解だよ出雲ちゃん!」
さらに動揺した店長がディスプレイの電源を落とす。
汗がすごいです、店長。
「出雲ちゃんって言うの?店長には気をつけた方がいいよ!ロリコンだし毎日ギャルゲー漬けだから」
赤毛のお兄さんは私を気遣って抱き寄せる。
ってうわー!!
密着!密着してるから!
「さがみんもさりげなくセクハラじゃない?!」
「俺はセーフなの!」
二人はやいのやいのと騒いでいるけど、私はそれどころじゃなかった。
心臓がありえないビートを刻んでますが。
「あ!俺、相模輝(サガミ テル)。輝って呼んでいいから」
私を離さないまま、『さがみ』と書いてある名札を見せた。
「えっと…相模さん、離れてもいいですか…」
いっぱいいっぱいになりながらこれだけ言うと、相模さんは今気付いたように解放してくれた。
キャラ、濃いなあ。
「ほらほら!紹介するのはさがみんだけじゃないんだよ♪」
歳は相模さんより年上のはずな店長がはしゃいでいる。
バックルームを出ると、レジを放棄していた相模さんの代わりに、長身で背中が広い男の人が立っていた。
「ひゅーくん、このコ今日からバイトで入る出雲ちゃん」
紹介されて私は頭を下げるけど、男の人はちらっとこっちを見ただけで我関せずといった雰囲気。
でも店長は全く気にしない様子だった。
相模さんがしゃべらない『ひゅーくん』の代弁をする。
「こいつは遠藤日向(エンドウ ヒュウガ)。
無口だけどいいヤツだから、高校生だし仲良くしてやって」
てっきり大学生かと思っちゃうくらいの彼は、黒髪短髪で鋭い目つき。
――何て言うか、怖い。
そんな仏頂面の日向くんはマイペースに仕事をこなしている。
「他にもいるけど、今日は来てないから今度紹介するね」
店長はレジを教えると言って手招きした。
初日からいきなり覚えられるのかな…
不安が持ち上がる。
でも、仕事が見つからないよりマシか。
私はお店のドアをくぐるお客さんに笑顔を向けながら、必死にレジのボタンを押す。
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