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「はい、今日はここまでね!」
夕方になって店長が言った。
私はスルメみたいにくたくたになっていた。
初日からこの労働…
意外とハードかもしれない。
そんな私に、疲れた様子もなく店長が
「さてここで問題です。チャ、ラン!」
効果音とともに言った。
――問題?
「このコンビニの利用者は、どっちの方が多いでしょうか!
A、男性
B、女性
さあどっち?」
店長は指を二本立てて聞く。
今日の店内を思い返すと、お客さんは圧倒的に女性が多かった。
「じゃあ、Bで」
「ピンポンピンポーン!大正解☆」
店長は元気に腕で丸を作った。
さて、このクイズの意味は?
「ここで働いてる女の子はキミだけなんだ。
少しお客さんからの風当たりがあるかもだけど、めげちゃダメだよ♪」
店長は爆弾発言をした。
私だけって…
でもよく考えれば、モデル並のルックスを持った相模さんを見る目的のお客さんもいたみたいだし、私のポジションを妬む人がいないわけないか。
「ヘーキヘーキ。俺がナイトになったげるから」
当の相模さんが人懐っこい笑顔で言う。
逆効果ですね、残念ながら。
「どうせ他の子にもそんなこと言ってんでしょ?」
店長が疑わしげに視線を投げる。
私は、言ってもらえるだけ幸せだと思うんだけど。
大人二人が言い合っているところに、日向くんがやって来る。
「…長いから、帰れば」
主語がない言葉に戸惑ったけど、口論が長引くってことだと理解した。
私は感謝をこめて深くお辞儀をすると、お店をあとにした。
「ただいまー…」
すっかりへとへとになった私を、ペットの黒猫が出迎えてくれる。
名前はオリオン。
黒い体に白い斑点が、オリオン星座みたいに並んでいるからってお父さんがつけた。
「お帰りねぇちゃん」
ゲームキューブを抱えた弟が廊下を横切る。
するとおじいちゃんが騒がしく足音をたてて走ってきた。
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