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「結局アイツ帰って来なかったな」
今朝の常陸の深刻な顔を浮かべる。
時刻は午後3時半、私は帰宅途中だ。
バイトは5時からだから少し余裕がある。
何年か前からほったらかしの空き地の横を歩いていると、サッカーボールが足元に飛んできた。
「ねぇちゃん!こっち蹴ってー!」
見れば弟の快晴が友達とサッカーしていた。
よし、姉の素晴らしい蹴りを見せなくては!
ローファーでおもいっきりボールを蹴り上げる。
でも球は弧を描いてまったく見当違いの方向に飛んでいった。
「どこ蹴ってんのー!」
「ご、ゴメン快晴…」
文句を言いボールを追いかける弟に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しょんぼりする私の後ろで、ぼそりと
「うわ、ダサ」
という声がした。
ハートを串刺しにされた気分の私は振り返る。
学ランを着た見知らぬ男の子がこっちを見ていた。
知らない中学生にバカにされたのかと私は心に相当の傷を負った。
まだ幼さが残る顔立ちの少年は、興味なさそうに立ち去る。
あとには傷心の私だけが残された。
PM.5:00――
Gマート
「おはよー出雲ちゃん!…ってあれ?」
どんより落ち込んだ私に店長が戸惑う。
私はさっきのショックが抜けていなかった。
年下にまで笑われるなんて、私って…
「大丈夫?今日は昨日と違う顔ぶれだから緊張しちゃったのかな?」
しきりに気遣う店長のために気持ちを切り替え、顔を上げる。
すると―――
「あ、さっきのコントロール0女子高生」
な…
なんであの生意気少年がここに?!
「店長、この子中学生ですよね?!」
真顔でけなされた私は店長に詰め寄った。
私の迫力にたじろぎつつ、店長は答える。
「ヤマトは僕の知り合いだから特別にお手伝いしてもらってるんだ。
未成年だからおこづかい程度だけどね」
私はGマートが自営業なのを思い出す。
イメージ的には駄菓子屋さんを子供が手伝ってると考えれば納得できる。
でもやっぱり――
「こいつ仕事できんの?」
生意気!!
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