始まりはパンの香り

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グーギュルル…。 「お腹空いた~」 広大な砂漠を歩く少年は、盛大な虫の音を響かせるお腹を、ボンポンと軽く叩いた。 「仕方ないにゃ、もう丸々二日は肉を食べてにゃいからにゃ」 砂にまみれたぼろ布を纏った、黒猫のノチェが言った。 「水ももうすぐで底をつくよ。このまま次の町に辿り着けないとヤバイなぁ…」 はぁと溜め息をつく。 「まぁ、なんとかにゃるにゃ」 「無責任だね…ノチェ」 マニャーナはジトッとした視線を向ける。 「ふふん。何とでも言えば良いにゃ。いざとなればマニャーナのを飲めば良いにゃ」 ノチェはとくに気にした様子もなく、力強く足を踏み出す。 「それは流石にやだなぁ。って言うか、マニャーナって呼ぶなよ。誰が聞いてるか分からないだろ!」 マニャーナと呼ばれた"少年"は、キッとノチェを睨むが、ノチェは何処吹く風で聞く耳を持たない。 「そんなにピリビリする必要ないにゃ。大丈夫、大丈夫だにゃ~」 「のんきな…」 マニャーナは諦めたように呟いた。 「他の誰かがいたら、マニャーノだからな」 念をおすように言うマニャーナに、強い日差しが降り注いでいた。
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