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視線を横に向ければラインオルトも似たような様子だった。
何故ならこの感覚はムアドンと戦った時に感じたものに似ているからだ。
これはこの三人しか感じていないためか大鬼はどうなっているのか分からない様子だった。
「その剣、万山の物だな。
貴様、そんな物まで造形出来るようになっているとはな。」
「いいえ、これはお祖父ちゃんの本物の剣。
今回だけ特別に貸してくれたのよ。」
その場で動かないままギスアークは絵梨花に尋ね、彼女は剣をギスアークに突き刺したまま答えた。
そう、絵梨花が最後に使用した剣は以前万山がギスアークと戦った際に使用したもの。
それを今日は特別に借りてきたのだ。
つまりこれだけは造形をしていないのだ。
ギスアークはそれが分かると何を思ったのかニヤリと笑った。
その表情を見た絵梨花は軽い恐怖を覚え、その場から離れる。
「万山め、つくづく哀れな男よ。
あの剣を使えば我に勝てると思っていたとはな。
我はそこまで甘くないぞ。」
ギスアークは一人ブツブツとそんなことを呟いていたが、ただ呟いているわけではないことは誰の目から見ても分かった。
何故なら赤かったギスアークの体は足から少しずつ黒くなっていったからだ。
そしてそれは決して退化しているようには見えなかった。
「10年前もそうだった。
奴らの勢いに押され、余儀なくこの姿にさせられた。
そしてあと一歩のところで仕留めきれず、封印状態となってしまった。」
彼は天井を見上げながらそう続ける。
その間にも体は黒くなっていき、残すは顔のみとなった。
「だが、もう同じ過ちは繰り返さん。
ここで貴様を殺し、今度こそ我が野望を達成する。
必ずな!」
そこまで言い終えたところでギスアークの変化は完全に終了。
体格は一回り大きくなり、全身は真っ黒になった。
「何?
ギスアークに何が起きたの?」
「奴はまだ死んじゃいません。
おそらく進化したんだと思います。
ここからが本番ですよ。」
少し気圧されている絵梨花に俊和は元気付けるべくそう返した。
それを隣で聞いていた大鬼は、なるほどな、と呟く。
「最終形態とかそう言う類だろ?
面白ぇ、やってやろうじゃねぇか!」
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