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そこまで話し終えたところでハウディスの作業が完了したのか、彼の体は半透明になっていた。
「ハウディス!」
「結果、君達は私を越えてくれた。
これで心置きなく逝くことが出来るよ。
私が保証しよう。
今の君達ならギスアークを倒せると。
…そろそろタイムリミットか。」
半透明になったことに気付いた俊和は慌てて彼の名を叫んだが、ハウディスは特に慌てた様子なく自身の体を見つめていた。
「フッ、まあ未練がないと言えば嘘になるが、ワガママを言わなければとっくに死んでいた命だ。
今更未練があるというのは贅沢過ぎるであろう。」
ハウディスは自嘲気味に笑うと俊和の方へ歩み寄り、その頭を撫でてあげた。
「俊和、葵に伝えてくれ。
ここまで俊和を育ててくれてありがとうと。
そして偉そうなことを言って世界に迷惑かけてすまなかったと。
無責任な言い方かもしれないが皆、あとのことは頼んだぞ。
さらばだ…。」
己の魔力をそして命を捧げたハウディスは結界の消滅と引き換えにその生涯を終えたのだった。
完全に全てを捧げたのか光が弾けるように姿を消したあとにはオーブすら残らなかった。
まるで、最初からハウディスという魔物が存在していなかったかのように。
「何でだよ…
何でまだ犠牲が出なくちゃならないんだよ!
どうして…」
死ぬと分かっていながらも助けてあげることが出来なかったことに俊和はこの上ない無力感に襲われながら思わずそう叫んでしまった。
そんな俊和を見ていられなかったのか聖菜は優しく彼を抱き締めた。
「俊和、ギスアークを倒しましょう。
ギスアークを倒して、ハウディスの…いいえ、双侍の想いに答えましょう。
それが私達に出来る唯一の恩返しだから。」
「ああ。
皆、行こう!」
言われた俊和は瞳から零れていた涙を拭いながら一同にそう言い放つと我先に先へ進み始めた。
ついに最大の敵だったハウディスを突破した俊和達はギスアークの目の前まで辿り着いた。
残された最終決戦に俊和は父親の死の悲しみを振り切りながら歩を進めていた。
「この建物の中にギスアークが?」
「はい、おそらくそうでしょう。」
ハウディスと交戦前から眼前に見えていた建物を目の前で見上げながら俊和は呟き、ラインオルトがそれに答える。
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