15『神炎と調和』

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「中はあまり広そうには見えないけれど?」 扉の隙間から中を覗きながら聖菜はそう言った。 そんな彼女の隣で大鬼は何の躊躇いもなく扉を開けた。 「中に奴はいるんだろ? だったらさっさと行こうぜ。」 「ちょっと、大鬼。 勝手に進まないの!」 大鬼がお構い無しに進み始めたため、絵梨花は慌てて彼の後を追う。 残りの三人も頷き合うと建物の中へ入っていった。 「ギスアークなんていねぇじゃねぇか。」 建物の中に入って真っ先に口を開いたのは大鬼。 彼は中全体を見回してギスアークの姿がないことに苛ついている様子だった。 おそらく早く戦いたいのだろう。 「大鬼さん、落ち着いて下さい。 あそこに入り口があるでしょう?」 そんな彼を落ち着かせるべくラインオルトはある方向を指差しながらそう言った。 見れば彼らの正面には青いブラックホールのようなものが待ち構えていた。 おそらくラインオルトはこれを潜った先にギスアークがいると言いたいのだろう。 「あの先にギスアークが?」 「はい。 前回もそうでしたから間違いないと思います。」 少し不安そうな絵梨花の問いにラインオルトは変わらぬ口調で答える。 それを聞いた大鬼はニヤリと笑った。 「だったらさっさと行こうぜ。 ギスアークの元によ。」 彼はそう言うと我先に入り口へ入っていった。 すると大鬼は吸い込まれたように姿を消した。 「大鬼!」 「大丈夫です。 決戦の舞台へ移動しただけですから。 さあ、我々も行きましょう。」 突然大鬼の姿が消えたことに動揺する絵梨花だったが、仕組みを知っているラインオルトは至って冷静だった。 未知の場所へ足を踏み入れると言う意味では俊和に恐怖はあったが、頷き合って意を決すると彼らは入り口へ入っていった。 「ここは?」 入り口を通ってまず真っ先に聖菜がそう口を開いた。 それにはラインオルトが答える。 「ここはギスアークが生み出した自身の拠点と高久良山を繋ぐ空間です。 そしてあの扉の先がギスアークのいる場所です。」 入り口を通った先は見渡す限り真っ青な空間だった。 その中心に彼ら立っており視線の先には長い階段とその終点に扉が一つ。
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