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あの扉の先にギスアークがいるとラインオルトは言いたいのだろう。
「おい、お前ら。
早く来いよ!」
俊和達が空間に見とれていると奥の方から大鬼の声が聞こえてきたため、一同は視線をそちらに向ける。
見ると彼は既に半分以上の階段を上がっていた。
そのため、ラインオルトは彼に忠告する。
「大鬼さん、ここは敵地です。
自分勝手な行動は慎んで下さい。」
その言葉を聞いた大鬼はさすがに突出しすぎたと感じたのか俊和達が追い付くまでその場から動かなかった。
「それにしても綺麗なところね。
とてもギスアークが生み出した空間とは思えないわ。」
「元々はギスアークが拠点と高久良山を繋ぐためだけに生み出した場所ですから他の者がここを汚すことがなかったのでしょう。
まずここへ立ち入った人はかなり少ないと思いますし。」
大鬼と合流した一同は階段を上がっていると絵梨花がそんなことを呟いたため、ラインオルトがそれに答える。
一度訪れているだけあってやはり詳しい。
さすがは四英雄と言ったところか。
そうこうしているうちに彼らは扉の目の前に到着。
扉には赤く禍々しい装飾がされており、まだ扉の前だというのにギスアークの気配がはっきりと感じられた。
彼らはギスアークの目の前まで辿り着いたのだ。
「これが最後の戦い…。」
「怖い?」
扉を見上げながら俊和が呟いたため、聖菜は意地悪な笑みを浮かべながら尋ねる。
すると彼は俯いた。
「全く怖くないと言えば嘘になる。
姑息な手を使ったとはいえ万山校長を倒したんだからな。
おそらく今までで一番辛い戦いになると思ってる。」
「大丈夫よ。
私達なら勝てるわ。
必ず。」
こうして聖菜に励まされたのは何回目だろうか。
それを考えると俊和は恥ずかしくなってしまった。
そんな二人をやり取りを見て大鬼が豪快に笑う。
「聖菜の言う通りだぜ。
俺達はハウディスのお墨付きだ。
弱気になってどうする?」
「そうよ。
私も全力で協力するわ。
だから絶対に勝ちましょう。」
大鬼の言葉に絵梨花は頷きながらそう続く。
一連のやり取りを見たラインオルトは輪の外から嬉しそうにそれを見つめていた。
(双侍、貴方の息子はとても良い仲間に恵まれましたね。
口にはしませんが10年前より負ける気がしませんよ。)
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