15『神炎と調和』

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聖菜の言葉を聞いたギスアークは当時のことを思い出したのか苛々した口調で言い返した。 それを聞いた大鬼は呆れてため息をついた。 「てめぇみたいな奴にはどうやらいくら口で言っても分からねぇみたいだな。 …確かによ、俺も昔は仲間なんて要らねぇと思ってたからてめぇが仲間って言葉に苛つくのは分かるさ。 だが、俺はこいつらに出会って考えが変わった。 だから証明してやるよ、仲間の力ってやつを!」 大鬼にしては珍しい発言に俊和は内心で驚きながら続けて口を開いた絵梨花の方を見た。 「貴方が数多の人の命を奪ってきたように私達も数多の魔物を倒してきたわ。 けれどこれらの争いは貴方が火種を作らなければ起きなかった争いばかり。 だから私達はこの力で貴方を止めるわ。 これ以上火種を作らせはしない!」 「言わせておけばどいつもこいつも…」 俊和達の発言を聞いたギスアークはいつ斬りかかって来てもおかしくない剣幕に包まれていた。 俊和達の発言に苛ついたというよりはその成長をよく思っていないという雰囲気の方が強かった。 それだけ俊和達はこの一ヶ月で本人が思っている以上に成長したということなのだ。 四人が一言ずつ言い終えたところで最後にラインオルトが皆の前に出てギスアークと向き合った。 「ギスアーク、貴方が思っている以上に人は賢い生き物です。 …確かにかつて貴方の研究の成果を笑った研究者達は酷いと思いました。 ですが、人間の全員が全員そんな人達ばかりではありません。 ここで証明して見せましょう。 10年前から人間がどれだけ成長したかを!」 「人間の成長だと? 笑わせる。 貴様らがこの半年でどれだけ成長したかなど知っておるわ! だが、逆に言えば成長したのを貴様らだけ。 全ての人間が貴様らのように成長したわけではない。」 彼はラインオルトの言葉に鼻で笑うとその言葉を振り払うかのように剣で空を斬った。 「万が一我がここで倒れようとも我と同じ考えを持つ者がこの世にいる限り争いは無くならぬ。 負の連鎖が止まることはないのだ!」 「止めてやるさ。 俺達が何度でもな!」 ギスアークの発言に俊和は力強く言い返す。 お互いに言いたいことは言い終えた表情をしていた。
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