15『神炎と調和』

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それでも俊和達を追撃するには十分すぎる技だった。 何故なら隕石とブレスが止んだ時には誰一人として立っていなかったからだ。 もちろんラインオルトもいつもの姿に戻されてしまった。 「これで分かったか! これが我と貴様らの間にある力の差だ! …確かに貴様らの団結力は厄介だった。 だが、貴様ら個人の実力はかつて我を追い込んだ双侍達に比べれば低い! それがこの結果だ!」 彼はそこまで言うと俊和達に剣を突き付けて勝ち誇った表情をした。 「まあ、最初の姿では勝てなかったのは事実だからその健闘ぶりは評価してやろう。 …さて、誰から殺してやろうかな。」 全身に激痛が走っているせいでギスアークが何を言ったのか俊和にははっきりと聞こえなかった。 そんな中、彼は顔を上げると近くで倒れている聖菜に声をかけた。 「聖菜、聞こえるか?」 「ええ、聞こえるわよ。」 自分でも分かるくらいに掠れた声だったが、聖菜には届いたらしく返事が来た。 そのため彼はこう続ける。 「ここまで追い込まれちまったんじゃあもう『アレ』に頼るしなかい。 協力してくれないか?」 「…いいわよ。 このまま殺られるくらいなら足掻きたいからね。」 二人はヒソヒソと話を進め、ある決意をすると立ち上がった。 それを見たギスアークは少し驚いた表情になる。 「ほう、まだ立てるだけの力があったか。 良かろう。 ならば貴様らから殺してくれるわ!」 二人はまだ戦える可能性があると判断したギスアークは二人に標的を定める。 それを横目に俊和と聖菜は向かい合うと互いに手を合わせて準備を始めた。 「これが失敗に終われば俺達は負ける。 怖いか?」 「怖いわよ。 でも私は引かないわ。 不思議と今回は成功する気がするから。」 今まさに死が目の前に迫ってきているにも関わらず二人は呑気に会話を交わすと魔力を高め始めた。 「行くぞ!」 「ええ!」 時は遡り一週間前― この日もいつも通り修行をしていた俊和達だったが、途中から俊和と聖菜だけ別メニューをやると青高に言われ、屋上を離れていた。 「今日は貴方達に伝えたいことがあってここへ呼び出したのよ。」 二人が呼び出されたのは普段は使われていない普通の教室。
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