15『神炎と調和』

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「神炎よ。」 「調和の風よ。」 そうこうしているうちに俊和の神炎は聖菜の体へ移動し、聖菜の調和の風は俊和の体へ移動し始めた。 ついに俊和は緑色の風を纏い始め、聖菜は赤い炎を纏い始める。 「我、数多の魔を打ち消す炎を授ける。」 「我、数多の守りを崩す風を授ける。」 そして俊和は神炎を生み出し、今纏っている調和の風と融合させていき、聖菜も同じく自身の風と神炎を融合させていく。 「振るうのは調和の風!」 「守るのは神の炎!」 準備を整えたのか二人は手を合わせるのをやめると今度は武器を重ね合わせた。 「「今ここに究極の力を融合させる!」」 その台詞を合図に俊和の体からは神炎が、聖菜のからは調和の風が現れ受け取った力と融合し始めた。 その様子をただ見ていることしか出来ないギスアークはようやく何をしているのか気付き、苛ついた口調で叫んだ。 「貴様らまさか、属性融合をしようというのか!」 そして属性融合にギスアークが気を取られている間に意識を取り戻していた残りの三人は少し遠くでその一部を見ていて、嬉しそうに笑った。 「私達は知っているわ。」 「あの二人がどんな困難も乗り越えて来たことを。」 「うちの高校であいつらに勝るコンビを俺は知らねぇぜ。」 絵梨花、ラインオルト、大鬼の順番に彼らは呟きながら属性融合の完成を見守った。 彼らが見守る中、ついに属性融合は完了。 二人の体の周りでは赤い炎と緑色の風が渦巻いていた。 「聖菜、大丈夫か?」 「正直きついけれど、せっかく出来たんですもの。 文句は言ってられないわ。」 何とか成功したことに俊和は安心しながら聖菜に声をかける。 それに対して彼女は笑って返したが、言葉の通りかなりきつそうだった。 これは以前俊和が神炎に目覚めた時と同じ現象で、これらはあくまで戦闘能力を高めるものであって傷を癒すものではない。 そのためそれまでに受けたダメージは引きずってしまうのだ。 それでも二人は負ける気が全くしていなかった。 「主、聖菜さん。 ついに成功したんですね?」 属性融合が終えたと分かった途端、ラインオルトは駆け寄りながら二人に尋ねる。 その言葉に俊和は頷く。 「ああ。 今なら負ける気がしないぜ。」
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