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『こんなの終わんねーっての…』
目の前に山積みにされた書類を暫く見つめていた雄輔は大きな溜息をついた。
自らが収める国の国民による嘆願書や署名、その他色々。
『な、すーぐるっ、野球しよーぜ野球っ』
書類の向こうに見える自分と同じ金髪の青年に子供のような無邪気な笑顔を見せる。
『ダメだ、先にそれ終わらせるって約束だったろ?』
卓と呼ばれた青年は呆れたような表情を浮かべ頭をガシガシと乱暴に掻き毟った。
雄輔と卓、鏡に写したような瓜二つの容姿。
彼らは双子であったが、兄である雄輔は王子、弟の卓はその召使。
双子は王家に不吉をもたらす、そのような言い伝えの為に、幼い頃に引き離された。
しかし毎日のように泣き続けた雄輔を見兼ねた今は亡き父親によって、再び引き合わされたのだ。
『じゃあさ、ちょっと出かけね?』
『はぁ?』
『海の向こう、行ってみたい』
『先にそれ終わらせてからだって』
『外交だと思って、ね?いーでしょっ?』
『……帰ったら続きやるか?』
『うんっ、やるやる!!絶対やる!!』
『解った、なら連れの人間手配してやっから待ってろ』
『え、やだ!卓と二人がいい』
『あのな、』
『お願い!二人で行こ?』
元々雄輔に弱い卓に、それ以上の言葉はなかった。
優しい笑みを浮かべ、ポンポンと頭を撫でてやれば雄輔は気持ち良さそうに目を閉じる。
『俺今すっげー幸せ』
それが雄輔の口癖だった。
【むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは
齢14の王子様
絢爛豪華な調度品
顔の良く似た召使
愛馬の名前はジョセフィーヌ
全てが全て王子のもの】
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