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『ん?』
もう夜中だと言うのにやけに窓の外が明るい。
不審に思い、ベッドから起き上がると窓へと近寄り、外を覗き込んでみた。
『何…あれ…』
雄輔の目に映った物。
真っ赤に燃える大陸、上がる黒煙。
場所はそう遠くはない、地図を取り出し、方角と位置を確認してみる。
『え…嘘、だべ…?』
今正に炎に包まれている大陸、それは崎本大海の治める国。
『っ…サッキー…!!』
慌てて部屋を飛び出し、大臣に援軍を送るよう叫んだ。
戦の真っ只中である、大海の国を救う為に。
だが、返答は思いもよらぬものだった。
『いけませんよ雄輔様、』
『は…?』
『敵軍に援軍等送っては。それに今、あの国を攻めているのは我が軍ですぞ』
耳を疑うような言葉。
『先程、大海王子を討ち取ったとの知らせが届きました。我が軍の大勝利ですな』
豪快な笑い声が響き渡る。
『何、で…』
『どうしました?』
『何で…何でサッキーをっ…!!』
先程ようやく止まった涙は再び雄輔の頬を伝った。
『政略上、あの国は我が支配下に置いた方が後々楽になります。それ以外の理由が必要ですか?』
『人の命を…何だと…っ…!!』
『雄輔様、何を今更。我らを除く他国の人間や我が国の国民等、雑草に過ぎません』
『雑、草…?』
『我らの養分となる哀れな存在、と言えばお分かり頂けますか?』
『っ…ふざけんなっ!!』
大臣に殴りかかろうと振り上げられた拳を兵士が掴む。
『お部屋にお戻り下さい。貴方は我ら家臣に名前だけ提供頂ければ良いのです。後は我らにお任せを』
『黙れっ!!』
だが決してその拳は振り下ろされることなく、兵士に両手を拘束された雄輔は部屋へと閉じ込められた。
【幾多の家が焼き払われ
幾多の命が消えてゆく
苦しむ人々の嘆きは
王子には届かない】
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