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村中が昨夜の戦の話で持ち切りだった。
この国とも積極的に貿易等の外交政策を取り入れた大海は、貿易で生計を立てていた国民にとっては掛け替えのない存在。
ましてやこの貧困の時勢に、本来国が行うはずである国民への食糧品や日用品の配給等を代わりに請け負っていたのも大海である。
国民にとって生きる綱とも言える彼を討ち取ったとされた雄輔は強い批判を受けた。
実際、この国の税や法等の取り決め、軍事は雄輔ではなく大臣が全て行っていたのだが、王子命令、その言葉を付けるだけで国民は全てが雄輔の独断であると思う訳である。
他国からも雄輔の独裁政権と認識されていた為、雄輔を庇う者は誰もいなかった。
そんな中、村の中心とも言える広場には多数の男達の姿が見られた。
皆鎧に身を包み、剣を掲げている。
『今こそ復讐の時である』
赤の鎧に身を包んだつるの剛士が口を開いた。
『王子を捕らえ、我が国の政権を奪還するのだ』
振り上げられた剣が太陽を反射し輝く。
集まる民衆を見つめながら、剛士は小さく口を開き、一人の名前を呟いた。
『雄輔…』
【悪の王子を倒すべく
ついに人々は立ち上がる
烏合の彼らを率いるは
赤き鎧の男剣士】
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