一章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 約束の花を腕に抱えて、膝を突いた。雨を吸った砂浜は冷たくて、砂が纏わり付く。でも、制服が汚れる事なんて頭に無かった。堤防が崩れたように涙は溢れてきて、止めることなんて出来なかったから。  君影草――。鈴のような花を持つ、綺麗な花を抱きしめて、僕は大声を上げて泣いた。 「約束の花だよ。そっちで幸福は訪れたかな? 僕はまだ駄目みたい。こんな事を言うと心配かけちゃうよね……ごめん」  嗚咽を混じらせて言葉を紡ぐけれど、耳を傾ける人は居ない。だけど、不意に――ホントに不意に風が僕の頬を撫でて、髪を揺らした。頭をぐしゃぐしゃと撫でられたような気がして、自然と笑顔が零れた。 「なんとか頑張ってみるよ。君に心配ばかり掛けられないしね」  君からの卒業――  Fin
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加