シャンドラの宵

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――15年前…… 大国シャンドラ。 「何故なんじゃ……」 豪華絢爛。 正にその辞が適“した”王宮。 楽園最大の王国と名高きシャンドラの王宮も、今や業火に舐め回され見るも無惨に崩れ墜ちて逝く。 そんな王宮を目の当たりにして崩れ落ちる男が1人。 顔にそろそろシワが走り初め、頭の方にも黒い髪に白色が混じり始めた四十も後半に差し掛かったこの男、獅童義正、通称シドー。 海を隔てた異国では神匠と称された伝説の職人であり、またこの地のとある組織では神成のシドーとも呼ばれていたこの男は今、王宮の中庭にて崩れ墜ちる王宮を呆然と眺めている。 四方八方を業火に取り囲まれていても、其処ら中から悲痛な断末魔が聴こえてこようともものともしない。 今さら逃げようとは思わない。 この史上最悪規模の大乱は自分のせいで引き起こったようなものだ。 第一、助かる筈がない。 仮にこの王宮から脱出する事が出来たとしても、そもそも国中が炎に包まれていては一体何処にどうやって逃げろと言うのだ。 「何故なんじゃ」 もう一度、同じ事を呟く。 1分前と違う点は、王宮の原型がもはやない事と、シドーの瞳から頬にかけ雫が1滴垂れている事だけ。 「ワシのせいじゃ……」 聞く者が誰もいない中吐かれた告解も、ただただ業火に呑まれるだけ。    
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