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助からない。
そうはわかっていても、人間とはどうしようもなく諦めが悪い。
別にこの王宮に残っているのはシドーだけではない。
給仕達を含めて百人近い人がまだ残っているだろう。
そして死ぬ。
何十万と言う人が住まう街も同じく死ぬ。
楽に死のうなんて思わない。
ましてや死んで侘びるようとも思わない。
こんな老いぼれの命一つで収拾が付くわけがない。
だがせめて、残る人達は楽には死んでもらおう。
そう思い、シドーは何処からともなく、自身が産まれた時に神から授かりし楽器、真影の器を取り出した。
竹で造られたソレは長い笛、異国に伝わる楽器で名を尺八と言う。
シドーがたった1人でレクイエムを奏でようとしたその時。
オギャア……と、今まさに枯れようとする赤子の泣き声が微かに耳に届いた。
ふとシドーの動きが止まる。
この声は、知っている。
ブラームス・ゲイル・シャンドラド。
このシャンドラの王の血を宿す最後の1人。
連中は黄昏の鐘楼を求めている。
そして黄昏の鐘楼はシャンドラの王、厳密に言えばこの地を治める者にしか鳴らす事が出来ないと言われている。
王の血が根絶やしにされた今、ブラームスが黄昏の鐘楼を鳴らす事が出来る可能性を唯一秘めている。
では、もしブラームスが死ねばどうなるか?
黄昏の鐘楼が金輪際鳴らない。とはならない。
シャンドラを征服し、新たにこの地を治める者を黄昏の鐘楼は選ぶだろう。
すなわちそれは、連中に黄昏の鐘楼が渡ってしまうと言う事。
連中が持つ神器はまだゼロ。
だがもし、この世のあらゆる音を聴く事が出来る黄昏の鐘楼が連中に渡れば、残り6つの神器は直ぐ様そろうだろう。
それだけは絶対に避けなければ。
「……王として生きろとは言わん。
ただ……生きてくれ」
決意を決めたシドーは自ら業火に消えた。
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