暁が射し込む街で

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  「はぁ、今日も疲れた~」 カランコロン、と小気味の良い鈴の音を響かせ、頭にバンダナ、首にスカーフ、腰には自分の真影の器である鐘楼鎚、と言う何時もの格好でブラムは行着けのカフェへと入る。 今年で15~6のその青年、若干金色が混じる茶色のややクセのはいった髪、鳶色の澄んだ瞳、その他身長も体重も、特にこれと言って珍しくもなんともない。 両親が居なくて自分の本当の名前も解らない。 と言う事ですら、ブラムぐらいの年頃の子ならそこまで珍しいわけでもない。 たった一夜にして起こったあの悪夢の大乱、楽園最大の王国と言われたシャンドラを襲った壊滅的な侵略、シャンドラの宵から既に15年の月日が経った。 侵略してきた隣国、アリアード共和国も何故かその直後に政権が崩壊、とてもではないが自国の四倍強の面積を誇るここをシャンドラを支配する余裕が有る筈もなく、一夜にしてシャンドラを制圧しておきながらその4日後から完全自治制、事実上の独立をした。 そんな経緯があり、今やシャンドラは元通りの姿を取り戻している。 「よぉブラム、いつものヤツか?」 「あ、お願いしまーす」 マスターに挨拶をし、ほぼ指定席と化した店に入って一番左奥の窓際へと腰掛ける。 ふと周りを見渡してみると、日が沈んだこの時間の何時も通りの光景が広がる。 戦火を耐え抜いた4人掛けで木の温もりが伝わる厚い椅子とテーブル、所々でユラユラと蝋燭から生まれた影が揺めき、常連達が談笑をしたりそれぞれに楽器を奏でたりしている。 何時も通りの光景。 平和になったとは言え、身寄りの無い孤独なブラムを、否誰しもを温かく迎え入れるこの店独特の雰囲気、他の常連達と同じくブラムもこの店が大好きだ。    
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