2×春浦アモラース

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三日前のあの時…、 カーブだ! ブォン!! 「…え?」 バットは空を切っていた。 白球は、まふゆの白いミットに しっかりとおさまっていた。 …空振り三振…か。 たしかにカーブだったのにな…。 見間違うはずはないだろうし…。 考えている俺のもとへ鈴々が走ってきた。 「私の勝ちですね空さん!」 ははは…小学生に負けるとは…。 前の監督者はこの子を なんだと思ってたんだ? と今も思ってしまう。 「ねえ…鈴々ちゃん?」 「はい?」 「最後の球ってカーブだったよね?」 聞いてみると少女達二人は笑い出した。 「あはは!やっぱ兄さんも ただのカーブやとおもっとったんやな!」 「え?どう言うこと?」 「くすす…空さん、 たしかに私はカーブを投げましたよ。 ただ、普通のカーブじゃなかったですけどね」 普通のカーブじゃない? でも変化はたしかに…まさか!? ひとつだけ、 カーブという変化球のなかに ひとつだけ、不規則な変化をする 変化球があった…。 時にカーブのように変化し、 時に投げた本人にも予測不可能な変化球…。 「“ナックルカーブ”…。」 俺はその名前を口に出していた。 鈴々はニコッと笑うと、 「そうですよ。 私の投げた変化球… あれはナックルカーブです。 野球を…うんん、 投手をやっていた人なら 絶対に間違うと思ったから…。 そうしたら、空さん…やっぱり 間違ってくれて…くすす。」 負けた。 最初は、驚きながらもただの可愛い小学生だと思った。 けど、全言撤回だ。 やっぱこの子は凄い。 「負けたよ…監督…やらせていただきます!」 「空さん…お願いしますっ!」 「へへっ兄さん、 私もお願いします!」 こうして俺はこのチームの監督となった。 ベンチに座って 選手達をチェックしながら そんなことを思い出していた俺は、 ベンチ横に立っていた 少女に声をかけたのだった。 「今日も練習しないの?」 「…昨日も言ったよ? 肩痛めてるから守備とかは 無理だって。 あんたそれでも監督か?」 「ごめんごめん。」
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