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「まったく…負け犬の癖に
監督になって、
その上まったくな程に
記憶が悪いなんて最悪だね」
この嫌みな少女は
露原 弓ちゃん。
鈴々やまふゆより
一歳年上で小学生5年生。
鈴々いわく野球の天才で
功・走・守が揃った人っていうこと。
あの鈴々が言うくらいだから
よっぽどなのだろうけど
実際には
俺が来てからのこの三日間の間に
守備練習は疎か、
バッティングやキャッチボール、ランニングすら見ていない。
つまり、能力が未知なのだ。
その少女は
いつも俺の近くで左手の肘を
右手に置き、顎をつまむような
よくいう考えるポーズで
他の選手達を見ている。
けど、やっぱり練習には参加しないのだ。
「ねえってば!
しかとかカス!」
ガツン!
金属バットで殴られた。
「いったあぁっ!!」
「ええい!うるさい!
ってか、ちゃんと聞け!」
「ごめんなさい」
なぜか謝る俺。
「…で?どうしたの?」
「…もう…見てなかったの?鈴々よ鈴々。」
「鈴々ちゃんがどうしたの?」
「はあ…」と軽い溜め息の弓。
「さっきの投げ方…あんた注意した?」
「え…いや注意してないけど?」
「…まったくね」
また呆れられた。
「あの子はたまに
スリークウォーターになる癖があるの。
オーバーとスリークウォーターの
不規則なフォームに
無理矢理な技術的投球。
あのままじゃあの子、
怪我するわよ?」
「!?」
その言葉を聞いてすぐに鈴々を呼んだ。
「鈴々!ちょっと来て!」
俺の声にすぐ反応し駆けて来てくれた鈴々。
「はい!来ました!」
「鈴々…癖に気づいてる?」
「え?癖ですか?」
鈴々本人も気づいてない見たいだが…、
と思うと弓が口を開いた。
「なら見てみる?
ここ三日間のあなたの
投球フォームの弱点を。」
ポケットから取り出したのは
小さめのビデオカメラ。
ここ三日間何もしていないように見えたけど、
本当はちゃんと一人一人のことを見ていた見たいだ。
もしかしたら、
肩が痛いっていうのは…。
「あんたも見なさい!」
弓に顔を引っ張られ俺もカメラの液晶画面に目をむけた。
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