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カメラの画面には、
いわゆるオーバースローの
いつも通りの鈴々が映っている。
「…最初は普通でしょ?
でもこれが30球くらいを越えてくると…」
「「あ!」」
鈴々と驚きの声がはもった。
そう、画面に映ったのは
フォームが少しくずれ、
先程のオーバースローから
少し斜めからの投げ方である
スリークウォーターへと
変化していた。
「…そしてこれが50球くらい投げたとき。」
「…。」
鈴々は言葉を失いただ呆然と見ていた。
画面に映っている鈴々自身は
まるで腕が変にひっかかるような
くずれたフォームへとなっていた。
しかし、ぱっと見だけでは
普通のフォームとは
あまり変わっていないようにも
見えてしまうが
投手ならその辺の細かいところは
すぐにわかった。
鈴々はさらに細かい。
だからこそ気づかなかったことに
ただ呆然としている。
一歩間違えば怪我をしていた。
それはそのカメラに証拠として残っていた。
俺は監督者として気づかなかったことに
ただただ自分を責めていた。
自分だって同じような理由で
この道を挫折していた…。
だからこそ、何故気づかなかったのかを自身で責めていた。
そんなことが顔に出ていたのか、
弓が俺の正面に立って口を開いた。
「…監督としてはダメダメ。
投手としてもダメダメ。
でも、気づいたならよかったじゃん。
間に合ってよかったじゃん。
でしょ?」
励ましてくれているのか
馬鹿にしているのか、
伝わりにくい喋り方だが、
その言葉の数々が
監督はこういうものなんだから
覚えておきなさいと言っているような気もした。
…そうだとしたら…、
いや、そうだとしなくても
この子も天才だ。
…本当に。
俺は、立ち上がって鈴々にアドバイスするその天才を
静かに見つめていた。
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