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目の前の天才少女“露原 弓”は
怪しい笑みを一瞬だけ浮かべると、
また今までのようにグラウンドの方を向いて
選手の観察をし始めた。
あの一瞬の笑み…。
あれは確実に嫌な予感がする。
というより、
確実に的中する気がする。
…何故かって?
そりゃあ…似た奴と何年も
バッテリーを組んでいたからなぁ…。
そいつと同じ癖だろうから、
絶対に何か大変なことを思いついたのだろうということは簡単に理解できた。
だって、あいつの妹なんだから…。
俺はそんなことを考えながらも
もう一度、弓の方へと視線を向ける。
黒のサイドテールに綺麗な顔立ち、
見た目は本当に美少女と言うべきくらいの
美しい少女なのだが、
なんせ、あいつの妹なんだから、
絶対に普通の性格な訳はない。
多分、姉譲りの鬼畜性は
この子にもあるだろう…。
…って、何考えてるんだ俺…。
自分にツッコミを入れながら、
俺もグラウンドに視線を変えた。
はっきり言えば、
まだあんまり詳しくみんなのことはわからない。
とりあえず、
鈴々、まふゆ、弓の三人は
一応ながら、どういう選手か理解できる。
(まあ、弓はよく分からなかったりするが…)
とにかく、
まだよく分からない選手が
いる以上、
自分もよく観察しておかないと…。
この時、あんまり気づかなかったことなのだが、
俺のやってたことは、
すべて、弓と同じ行動をしていた気がした。
もしかしたら、
本当は監督者になりたての俺への見本となってくれてたのかも知れない…なんてな。
まあ、あのマヤヤの妹だからな…。
ありえそうだ…なんて思っている間に、
その日の練習は終わり、
みんなで解散した。
みんな手早く帰って行き、
いつのまにか、
残ったのは俺と鈴々の二人だけ。
「また残っちゃいましたね」
「ははは3日連続だな」
「くすくす…そうですね。
今日もやっていきますか?」
3日前、
鈴々と出会った日から
やって来たこと…、
二人共のんきにしてたことで始めたその練習…、
それは…まだ他の子には
ないしょの秘密レッスンだった。
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