1×白球少女

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「空さん…じゃあ…やりましょうか。」 右手に青いグローブをはめて 白いジュニア用のボールを掴み マウンドへと向かっていく鈴々。 この時点で俺は打者ということか。 まあ、多分俺の足を気づかってくれたのだろう。 「あ…でも捕手…の心配はないか。」 言葉の途中にマスクをかぶった まふゆが走ってきた。 バッターボックスの後ろに座ったまふゆは静かに口を開いた。 「…兄さん…打てる?」 「へ…?」 まふゆの怪しい言葉に 少し疑問が口から漏れたものの、 鈴々の 「始めますよー」 の言葉でバッターボックスに入った。 一球目、 鈴々の初球…。 スパァン! ど真ん中、ストライク。 ノビのあるストレート。 意外と速いその速球に 驚かされたが、 さらに驚いたのは 鈴々の目。 さっきまでの 可愛らしい少女の顔ながら 今は完全に選手の顔だ。 スパァン 「ボール。兄さん、ボケッとしすぎてないか?」 「あ、ごめん」 三球目、 パァン! 低めのボール玉。 …この子…まさか…。 四球目、 スパァン! きわどい…がボール。 「ねぇ…まふゆちゃん…だったっけ?」 「んー?」 「今までの投球…って わざと?」 「さあー? 私には、わからへん。」 五球目、 スパァン! またまたきわどいところ。 今度はストライク。 …フルカウント。 いわゆるツーストライク スリーボールの状況…。 次の一球で決まる…。 俺もこういう勝負なら こういう条件に持って行っただろうし…。 次の一球は…恐らく決め球。 六球目、 鈴々が投げたその球は…。 元投手だからわかる…。 カーブだ! ゆっくりと曲がってくる その変化球に大人げないと思いつつも俺は力いっぱい バットを振り回した…。
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