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吹き抜ける風は肌を刺すほどに冷たく、冬の残滓を村に届けていた。
吾郎は同い年の稲造と共に、村を見下ろす高台に座りぼんやりとしていた。
稲造は草の上に寝転がり、半ば目を閉じている。
眠ってはいないはずだが、ピクリとも動かない。
吾郎は膝を抱えると、見慣れた田畑の並ぶ村を見下ろした。
農閑期の今、村はまるで死人のように寂しく佇んでいる。
村人もまた、厳しい冬を越すのに精一杯で、生きているのか死んでいるのかわからない程に憔悴していた。
吾郎は冬が大嫌いだった。
暗い家の中で藁を編んだり、雪の中を隣町まで行商に出たりするくらいなら、太陽の下で田植えや稲刈りに精を出していた方が断然楽しい。
もうすぐ終わる冬を恫喝するかのように、吾郎は冬晴れの空を睨みつけた。
突然、身動き一つしなかった稲造が口を開いた。
「吾郎ちゃん、学校って知っとるか?」
吾郎は稲造を真似るように寝転がると、欠伸をしながら答えた。
「知らん。
そりゃ何ね?」
稲造は半身を起こすと吾郎の方を向く。
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