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北の地方にある村にとってはもっとも暮らしやすい季節である初夏の昼下がり。
どこにでもあるような小さな村の集会場、多くの人の足によって踏み固められた地面の上に白い粉で一般の人には不思議な模様にしか見えないものをせっせと描く少年がいる。
やや乱暴に切られた金髪はどこと無くその少年の元気の良さを醸し出していて、綺麗な青色の瞳はまるで空を思わせるかのようである。
顔立ちは少し幼いが、青年と言われれば妙に納得してしまいそうだ。
「認めさせてやる、絶対に認めさせてやる…」
時折呟くその言葉には確かな決意と必死な感情が滲み出て………傍目から見ると少し不気味である。
しかしどうやらこの村の住人達は気にしている様子はなく、すでに少年と不思議な模様を取り囲むように囃し立てている。
「おいハイ坊!慌て過ぎて舌を噛むなよ!!」
そのうちの一人であるかなり体格の良い大男の声に少年は描いている手を止めてその大男の方を睨み付ける。
「うるせぇ!誰がそんなヘマするきゃっ!!」
…言ったそばからこれである。男たちはもちろん大爆笑。
一方その噛んでしまった張本人――ハイデン・ゼパークは顔を真っ赤にさせ、まるでそれをごまかすように止めていた手を動かし始める。
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