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「てっきり兄さんはそういうのには興味がないと思ってたけど本当に興味なかったんだ」 「余計なお世話だ」 疑いつつも彼方の容貌を見て妹である前河原 柚美(マエカワハラ ユズミ)は渋々納得した。 「彼にはいつもお世話になっております。今後ともどうかよろしくお願いします」 は正座をして、思わずこちらも恐縮してしまいそうなお辞儀を見せる。こいつは誤解を招く行動が多い。 「いやいや、兄さんも相当人が悪いですから、気にしなくていいですよ。気兼ねなく言ってやって下さい」 「お前は俺か。……で、何しに来たんだ?」 俺の素っ気ない態度に妹はムッとした表情を見せる。 「急に電話寄越してきたから、心……これも何かの縁だろうし最高学府の人から勉強を教わりに来たんだけど」 「学校は?」 「夏休み」 「塾は?」 「香澄(カスミ)だけ。私は行ってない」 香澄とは双子の妹の方である。 「ふーん。つまり俺に勉強を教わりたいと?」 「悪いわけ?」 「何でお前が喧嘩腰かよく分からない」 「うるさい無職」 「えっ桂馬君無職なの?」 「ねぇ、何でうちのパパだけいつもうろうろしてるの?」 「あ゛あ゛あ゛!!もうだから嫌なんだよ!!」 自分の生活を他人に干渉される覚えはない。俺はもう働かなくていいんだ。 だが、こいつだけは違った。 「大丈夫!私に任せて!君にぴったりの仕事を今から作るから!」 こいつだけ斜め上の方向へベクトルが向かっていたのだ。  
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