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「へぇ……赤谷 菜月(アカタニ ナツキ)さんね。で、ここに来た動機は?」
菜月さんは、はぁ……と深い溜息を落とす。
「夫に逃げられたの。高校の時の担任だったんだけどね。どうしてか惹かれちゃってさ。私結構偏差値は高い高校に行ってたんだけど、ブランクっていうのかな、勉強が出来なくなってて、独学でちょこちょこやってたけど、指導者がいないから学校に行く事も出来ないし、行き詰まっちゃってさ」
代償だろボケ。
「今世間にはインターネットというものが――「で!!どうして大学へ?!」
「元々勉強したいって意欲はあってさ、心機一転新しい人生を歩もうと思って……」
本音は合コンしたいだとか大学という肩書きが欲しいだとかそういうもんだろうけどな。
と、今までの経験から勝手に推測していると、
「いや!ここで建前言っても仕方ないよね!本音を言うわ。遊びたいの!結婚してから苦労したし、あの浮気野郎のせいで精神を摩耗させられっぱなしだったかね。ここでいっそパーッとね」
「「…………」」
畳み掛けるように本音を話す彼女に思わず呆気に取られる俺達。とりあえず、気を取り直して言葉を探す。見つけた。
「今世間にはボーダーフリーと呼ばれる大学が――「私感動しました!!もうこの際いい大学入って元夫よりもいい人見つけて一泡吹かせちゃいましょう!!」
思わず眉間を押さえた。簡単に言ってくれる。ボーダーフリーの大学は別として生半可な努力では大学なんて受かりっこない。俺の周りがそうだったから良く覚えている。
「金銭面では大丈夫なんですか?」
「そこは大丈夫だから気にしないで」
「…………」
大学で俺は様々なバイトをこなしてきた。そこで培われたものは観察眼である。
「そこは、はっきりさせてもらわないと困ります。そちらにも生活があるのですから」
「えっ?」
「えっ?」
全然話が読めない。何故首を傾げる?思わず明音を見た。すると先程のチラシを見せつけられる。
下の方に、下宿部屋完備と。
「…………」
死ね。
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