1人が本棚に入れています
本棚に追加
ピンポーン。
「はぁ……」
そろそろ陽も落ち始め、夕方から夜に移り変わる時間帯。溜息を促すチャイムが俺の思いに反して、嘲るように、家の中に軽く響く。こういう時、肩書きという奴に無性に腹が立つ。
「今行きまーす」
もう勝手にしろ。俺は畳に全身を預けた。
「私帰る!!こんなとこに居たくない!!」
と、少女っぽい、若々しい声が俺の鼓膜を揺らす。
帰れ帰れ。……ん?少女っぽい……?
「こんな汚い所嫌だ!!講師が一番頭いい大学出てるとか絶対嘘っぱちだ!!帰らせてよ!!勉強なら家でするから!!」
酷い言われようだ。どんな親がしつけしてんだよ。
「パパはアメリカでアンドロイドの研究してて、ママは社長で頑張ってるのに!!何で私だけがこんな所に!!罰だ!罪だ!拷問だ!」
本当に何でこんな得体の知れない所に来たのか不思議だ。アメリカに住んでろよ。いや、受精卵からやり直せ。
「まぁまぁ、お嬢様には私がついていてあげますから。それに人は少ない方がいいでしょう」
「あのぅ。そろそろ上がってもらっても大丈夫でしょうか?」
普通ここまでめたくそに言われたら追い返すだろうに。我慢強いなぁ……。
「あっ、すみません。お嬢様は大変な人見知りでして、入るのもやっとだったもので。私に対してだけは威勢を張るんですけど……」
明音に言ってたんじゃないのかよ!!
「よろしくね」
「…………」
急に無口になりやがった。全く人見知りにも程があるぞ。と、人見知りの俺が言ってみる。
「お嬢様。そろそろ入りましょうか」
「うっ!うるさい!!入ればいいんでしょ!入れば!」
最初のコメントを投稿しよう!