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ピンポーン。 「はぁ……」 そろそろ陽も落ち始め、夕方から夜に移り変わる時間帯。溜息を促すチャイムが俺の思いに反して、嘲るように、家の中に軽く響く。こういう時、肩書きという奴に無性に腹が立つ。 「今行きまーす」 もう勝手にしろ。俺は畳に全身を預けた。 「私帰る!!こんなとこに居たくない!!」 と、少女っぽい、若々しい声が俺の鼓膜を揺らす。 帰れ帰れ。……ん?少女っぽい……? 「こんな汚い所嫌だ!!講師が一番頭いい大学出てるとか絶対嘘っぱちだ!!帰らせてよ!!勉強なら家でするから!!」 酷い言われようだ。どんな親がしつけしてんだよ。 「パパはアメリカでアンドロイドの研究してて、ママは社長で頑張ってるのに!!何で私だけがこんな所に!!罰だ!罪だ!拷問だ!」 本当に何でこんな得体の知れない所に来たのか不思議だ。アメリカに住んでろよ。いや、受精卵からやり直せ。 「まぁまぁ、お嬢様には私がついていてあげますから。それに人は少ない方がいいでしょう」 「あのぅ。そろそろ上がってもらっても大丈夫でしょうか?」 普通ここまでめたくそに言われたら追い返すだろうに。我慢強いなぁ……。 「あっ、すみません。お嬢様は大変な人見知りでして、入るのもやっとだったもので。私に対してだけは威勢を張るんですけど……」 明音に言ってたんじゃないのかよ!! 「よろしくね」 「…………」 急に無口になりやがった。全く人見知りにも程があるぞ。と、人見知りの俺が言ってみる。 「お嬢様。そろそろ入りましょうか」 「うっ!うるさい!!入ればいいんでしょ!入れば!」  
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