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「…………」
自分でも一瞬早過ぎて何が起こったか理解が出来なかった。誰が女性から馬乗りされ、ナイフを突き付けられると思うだろうか?いや、思わない。
だが、そこは高学歴パワーで何とか持ち直す。
「……あんた、人見知りの気持ちなんて分かりもしないだろ。特にその年代の女の子の場合特に」
悪いが俺には良く分かる。他人の心理をいやがおうでも分かってしまうと、人という生き物が信用仕切れなくなるのだ。たとえ相手がどんな親友だとしても。
彼女の場合、コンプレックスとなる要因は見た目からは見受けられない。ならば原因は家庭環境あたりか、過去に何かあったのかのいずれかになるだろう。
「さぁ?私はただ奥様のご意向に沿っているだけです。お嬢様を危険からお守りするよう」
「…………」
「…………」
お互い睨み合う。
「どきなさい!!警察呼びますよ!!」
「おっと。これは失礼」
明音が叫んでようやく事態は収拾した。
「過ぎた口を開くからこうなるんですよ」
俺は美月の方を見る。
彼女は俺に何かを言おうと口を開きかけて、目を逸らし、口を閉じた。
乙女は彼女の手を掴む。
「それじゃあ帰りましょう。どうやらここも駄目だったみたいですね」
違う。
『なんだ。妹達は留守かよ。じゃあ俺帰るわ』
『なぁ。単位やるから妹達に一度合わせてくれ』
違う。
「どうしました?お嬢様?早く行きましょう」
違う。違う違う違う違う違う違う違う違う。
「待てよ」
咄嗟に口を開く。
「何ですか。いい加減にしないと――「黙って!!」
美月は怒鳴る。本当に溜めていたものを吐き出すように。
「よく言った」
それを言われたら俺も言わないわけにはいかない。
「よく聞け。お前らは俺が責任を持って教えてやる。ノーとは絶対言わせないからな」
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