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「ここはこうしてこうすればいいだろ。なんて手取り足取り教えても伸びないからな。だからちょくちょくヒントは出してやるから。自分で考えろ」
何でも当て嵌まるものだが、全て手取り足取り教えていてはなかなか上達しないものだ。
まぁ、こいつがある程度知識があるからスムーズに出来るのだけど、それに関しては流石我が妹だと言っておきたい。
「分かった」
それにこの頃の受験生というのは人の知識や意見を貪欲に吸い取ろうとしてくるので、教え甲斐があるというものだ。
受験生はな。
「……ここの斜線って……何だっけ……?」
「あぁ?……ああ。三平方の定理だろ」
「……あっ、本当だ!何で思いつかなかったんだろ」
「復習が足りないんだよ。まだ時間はあるから教科書読み直せ」
「うん。分かった」
……素直だなぁ。こいつらが幼稚園のときもこのくらい素直だったな。今はすっかり変わってしまった、特にもう一人が。
「ありがとう」
妹の笑顔を見たのは何年ぶりだろう。
……どうして俺だけこんなに早く死なないといけないんだ?
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