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「英語は精読からの読み慣れが大事だからなー。あと分からなかった単語は辞書などで調べておくよーに。音読も大事だぞ」
大分コツを掴んできた。と思いたい。
ただ反応が薄い分ちゃんと飲み込んでいるのかそうでないのか判断しにくい。
一応同じ屋根の下で生活しているのだから質問はなるべく受けようとしているのだけど……。
どうやら俺と生徒達の間に溝があるようだ。
さて、どう埋めていくべきか。
「すみません。お嬢様が伝えたい事があると」
俺の実力を見せ付けるべきか。自分が今どのくらいの学力かよく分からないけど。
「すみません。私の声聞こえてますか?」
今度時間計ってセンター用の演習パックでもやってみるか。
……でも時間が勿体ない。
「先生」
「!?」
珍しく乙女さんから先生と呼ばれた気がする。何だか嬉しいような……、
「何か用?……てか……何でこっち向けてフォーク握ってんのさ?」
恐ろしいような……。
「趣味です。気になさらないないで下さい。それよりもお嬢様が先生に伝えたい事があるとおっしゃっております」
またバイオレンスな想像がしやすい趣味だな。何か怒らせるような事したっけ?
「ふぅん。何?」
「………ぁ…………え……」
乙女さんの後ろで美月が小鳥の囀りにも負けそうな声で何かを伝えようと試みている。
顔は真っ赤。まるで沸騰でもしているかのよう。
「もっと大きな声――「あなたは聞く努力を最大限するべきです」
「…………」
渋々耳を研ぎ澄ます。方法は簡単。俺の世界を美月だけにすればよい。
すると聞こえてくる……本音と建前が……。
『……玄関(玄関に誰かうろうろしててウットーシーんですけど)……に(何とかしてくれませんか?)』
「よく分かった。ありがとう」
俺は外界から聞こえる声(菜月)に感謝をするほかなかった。
「まだ途中です!!」
「……ちっ」
うっせーな。反省してまーす。
「…………」
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