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「秘密の共有?貴方のチンケな秘密と私のそれとでは全く釣り合わないと思いますが」
「釣り合えばいいんだろ」
「……ふん。そこまで言うなら一応聞いてあげます。ただし」
「?」
「不用意な発言は寿命を縮めますから」
「……俺の秘密は――――」
――――――――
蝉の鳴き声が澄んだ静寂に溶け込む。
二人を包む空間には誰も干渉をすることの出来ない歪みが存在を存在していた。
「……………………」
言葉を失った彼女はたまらず俺から目を背けた。動揺を示す冷や汗が彼女の頬を伝う。
彼女は賢い。わざわざ二度も言わずに済んだのだから。
「さて、これは秘密だ。誰にも言わないでくれ。じゃないとここにいられなくなる」
「…………………」
返事のないまま幾数分が過ぎ――――
「…………私の母は……父を殺し……自殺……しました」
途切れ途切れながら、彼女は言葉を口にした。
「私と……お嬢様を……美月を残して」
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