第一話 アイドルオーバーラン!

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「ふぅ、これだけやっても顔すら出してくれないか…。」 駿は疲れて座った。 そこへ、 「駿君!」 「Σ!…美希か…。」 貴音の次は美希だった。 「どうした?」 「駿君にいいもの持ってきたの!」 そう言って美希は自分の鞄を探る。 「やっぱりおにぎりか?」 「Σ…。」 駿の一言で美希の動きが止まる。 「駿君。」 「ん?」 美希はそのまま顔を上げて、 「エスパーはそう簡単に人の心を読んじゃいけないと思うの。」 「!?…図星だったのか…。」 「ま、まあ。あげるの!」 包みを差し出した。 「ありがとう。ところで、なんで来たんだ?」 「心配だったからなの。」 「あ、ごめん。」 「いいの。で、どうなの?」 「見てのとおり、さっぱりだ。」 駿はうなだれる。 「……もうひとつ、いいもの持ってきたの!」 「もうひとつ?」 続いて鞄から取り出す。 「ジャーン、なの!」 それは…。 「ね、ネコ耳!?」 「そうなの!」 美希は笑って言った。 「どこから手に入れた!?」 「プロダクションにあった衣装から持ってきたの!」 「で、これをつけろって?」 「そうなの!」 美希がさらに笑顔になる。 「はぁ…。」 「それで最後に…。」 「まだあるのか!?」 駿は驚く。 しかし、 「ううん。最後は物じゃないの。」 「え?」 「えーと、ミキは難しいことはわからないけど…。駿君は駿君でいいと思うの。」 「?」 「響ちゃんの事も、駿君らしく、頑張ればきっとわかってくれると思うの。」 「…ありがとう、美希。ところでさ、もし…。」 「そんなことは考えたくないの。」 美希は駿の質問より早く返答する。 「え?」 思わず駿も聞き返した。 「起こってもないことを考えるのは、面倒なの。ミキは今起こっていることについて考えるので精一杯なの。」 「そ、そうか。ごめんな、ありがとう。」 「あふぅ…じゃあ、駿君がんばってね。」 美希は帰った。
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