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「すまぬ。
だがここから先、レン殿が言おうとしていることは誰かに聞かれると不味いと思ったのだ。
………特に、この教会の中では。」
「え………………?」
語調を落として神威は更に続ける。
「翼竜教の者達は皆この世界の在り方が真であると考えている。
レン殿のような考え方は、ここではただの異分子でしかない。
この世界はおかしい、と言うだけで翼竜教の者達はたちまちレン殿の首に縄をかけるだろう。
…………ここはそうゆう場所なのだ。」
「…………………。」
だが、と神威は声を明るくする。
「我は翼竜教に厚い信仰を持っている訳ではない。
寧ろ、レン殿の考えに我は賛同したい。」
笑って言った神威に、今度はレンが驚く。
「え………………。
俺は………、俺は世界を変えようと、壊そうとしているのですよ?」
「……そうだな……………」
少し考えながら、神威は紅茶を口にする。
「我の祖父は我と同様、この帝国の学士をしていた。
歌姫の研究を最初に始めたのは我の祖父だった。
歌姫がなぜ存在するのか。
歌姫がもたらす我々への影響はどれほどのものなのか。
………祖父はおのれの学士としての全てを歌姫の調査に捧げていた。
幼かった我も、そのような祖父の学士としての姿を誇りに思っていた。」
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